バルダー君のアルバム。

犬種はサルーキ。享年16歳。
おいしいものを食べる事に一切の妥協が無く、よくしゃべる犬でもあった。
私は、バルダー君と長野県を歩く中で、果樹農家になった。

バルダー君は、我が家で三代目の犬になる。
バルダー君が家に来る前に、ベルジアン・タービュレンの犬が二代居て、
どちらも早くに病気で亡くなり、短命であった。

だから、我が家では、
バルダー君にはとにかく長生きをしてほしいと思いながら、孫のように大切に育てられ、
大型犬としては非常に長命な、16年の歳月を生きた。
バルダー君の顔立ちは、老犬の時が特にかっこよかった。

バルダー君は、サルーキの中でも特にデカくてかっこいいので、
バルダー君と散歩していると、地域の人によく話しかけられた。
「子牛が歩いてきたかと思った!」なんて言われた事もある。

私が、果樹園候補の農地を探している時、
こうして話しかけられた地元の人との会話の中から、
今のバルダー果樹園の地主さん達とも繋がっていく事が出来た。
バルダー君は、バルダー果樹園の功労者なのである。

サルーキは誇り高い犬で、通常の犬のように訓練を強制する事は出来ない。
もし強引に命令を聞かせようとすれば、卑屈で怯えたサルーキになってしまう。
こちらにできる事は、多くの時間をかけて話し合い、本人に納得してもらう事だけだ。

こちらが、バルダー君の言葉をすぐにわからなくても、
バルダー君は、いつも諦めずにしゃべり続けてくれた。
言葉というものは、人を知りたいと思うからこそ発せられる悪あがきであり、
理解を目的に作られた道具ではないのだと思う。

バルダー君の人生は、私が想像していたものよりも何倍も、
バルダー君らしいものであったと思う。
私は、バルダー果樹園の顧客にも、
バルダー君のような、より自分らしい人生を歩んで欲しいと思っている。

だからバルダー果樹園の果実は、
自分らしく生き、その人生を自己紹介しているかのような強い香りを持っている。
その香りを感じた皆さんが、
バルダー君のように、より自分らしい生き方が出来ると、私はうれしく思う。
だから私は、バルダー果樹園なのだ。

バルダー君は、私のファーストヴィンテージのワインが出来る直前に、亡くなった。
彼なりに、私を見守っていたのだと思う。

※写真の中でリードを持っているのは、私ではなく私の父です。